背景・歴史

背景

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)の取り組みは、1920年代の北米において、医療にまつわる子どもの体験を改善するために、“遊び、プリパレーション、教育のプログラム”として始まり、発展してきました。その背景には、医学の目覚ましい進歩があります。医学が進歩し、様々な病気が身体的には治せるようになりましたが、そのためには、長期間の過酷な治療が必要とされ、子どもや家族の精神的負担が新たな課題となったのです。体は元気になったけれど、その治療の過程で心に傷を持った子どもたちは、なかなか学校や社会に笑顔で復帰することができません。そんな子どもたちを一人でも少なくするために、医療の現場において、心理社会的支援の専門職が必要とされたのです。
子どもの医療体験がよりよいものになるよう、北米のCLSがまず取り組んだことは、親の面会制限の撤廃でした。子どもが安心し、情緒的に穏やかに過ごすためには、親の存在が欠かせないことを訴え、病院においても両親が積極的に子どものケアに参加できる環境を整えました。この取り組みは、現在北米の小児医療の理念として広く認知されている「子ども・家族中心医療」の先駆けです。
1970~1980年代には、様々な研究で、CLSの取り組みが、子どもの入院期間短縮や医療体験に対するトラウマの減少に効果的であると証明され、ますます発展することとなりました。発達心理学、小児心理学、家族社会学などを基礎とした教育課程が整備されたのもこの頃です。
現在では、米国小児科学会が「(CLSは)小児医療に不可欠な存在」と高く評価するなど、北米においてCLSの取り組みは広く認知されています。子ども病院や小児病棟だけでなく、ホスピスや児童虐待一時保護施設などにも活動の場を広げ、約600の施設でCLSの取り組みが展開されています。 日本においても、1999年以降、病院を中心にCLSの取り組みは広がりつつあります。

活動の歴史

1922

米国ミシガン州Motto Children’s Hospitalにて、子どものための遊びのプログラムが始まる。その後、1949年までに、北米の9病院で遊びのプログラムが設置されていく。

1955

チャイルド・ライフの第一人者であるEmma Plankが、Cleveland City Hospitalにて、ノーベル賞受賞であるFred Robbins医師、に入院中の子どもたちの社会的・情緒的・教育的支援プログラムを作るよう依頼される。その後、Emma Plankは、チャイルド・ライフ・プログラムの発展、教育に大きく貢献していく。

1966

Association for the Well-Being of Hospitalized Childrenが設立される。(1967年Association for the Care of Children in Hospitals:ACCHと改名。)病院における子どもへのより良いケアを目指し、様々な職種が活動を始める。

1970~1980年代

チャイルド・ライフ・プログラムは急速に発展し、多くの病院で実践されるようになる。

1974

ACCHの中で、CLSの委員会が構成される。その後、この委員会の中で、専門職としてのCLSの基準や認定について議論されていく。

1982

Child Life Council(CLC)が設立される。1983年の登録者は、235人。

1986

資格認定によって証明書が交付されるようになる。

1987

カナダで、Canadian Association of Child Life Directorsが設立される。(1996年Canadian Association of Child Life Leadersに改名。)

1998

試験による認定資格制度が設立される。CLCの登録者は約1500人となる。

2001

CLC登録者数が2000人を超える。約400のチャイルド・ライフ・プログラムが展開される。

2005

CLC登録者数が3000人を超える。約470のチャイルド・ライフ・プログラムが展開される。

2007

CLC創立25周年。

2010

CLC登録者は約4000人。世界中で約600のプログラムが展開されている。

日本での活動の歴史

1999

日本で初めてCLSが病院で勤務を始める。

2001

日本チャイルド・ライフ研究会が設立される。チャイルド・ライフの理念のもと、子どもへのより良い支援を目指して、様々な職種が集まり活動を展開する。

2011

CLSの人数増加に伴い、日本における専門性の確立や専門職としての資質の維持向上をしていくための職能団体として、チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会が設立される。